研究・業界情報

『フィットネスクラブもヘルスケア産業!』
(株)プロフィットジャパン
菊賀信雅

3月10日付の読売新聞に、以下のような記事が掲載されていた。それによると、

「経済産業省は、医療や介護などヘルスケア産業の本格的な支援に乗り出す。4月から、企業が新規参入しやすくするため、国の支援施策などの情報を集約した相談窓口を設置する。ウェアラブル端末で集めた血圧や脈拍などの健康データを病気の予防や治療に活用する実証実験も始める。」としています。
健康寿命を伸ばすために、ITを活用し、高齢化でニーズが増えるヘルスケア産業の育成を後押しするということです。
「患者に身に着けてもらった腕時計型端末などで、血圧や脈拍、睡眠時間、服薬時間といったデータを収集したうえで、連携する医師に内容を伝え、体調の変化を分析。病気の予防や治療に役立てる。企業間で健康データを共有する仕組みも作る」

これらのデータを経産省や厚生省などが所管する日本医療研究開発機構を通じて実証実験を行い、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防につなげるのがねらいとしています。
これらのことは、患者や生活習慣病対象者、介護予防対象者にとどまらず、広く我々フィットネスクラブでも十分に必要な内容だと思われる。フットネスクラブ内で上記のようなデータを集積し、そのデータと生活習慣病などのデータとを対応させることが出来れば、そのまま運動やフィットネス効果と健康度との関係を明らかにできることになります。
例えば、各フィットネスクラブで、携帯型端末を会員証として会員全員に配るとします。(現在は高価なので、活動量計的なものでも良いと思われる)〔通常、入会時会員から登録料をいただいているがその費用を携帯型端末等に充てる〕
そうすると、会員全員の活動量や血圧、脈拍、睡眠時間などがわかる。その会員全員のデータを集積し、また各個人の病気や介護、認知能力のデータを対応させて、生存分析を行うことで、どのくらい活動量があれば、病気や認知症にならないかというデータも出すことができます。年齢別、性別、生活状況や家族構成、月別の利用回数や利用アイテムがわかれば、さらに詳細な病気や認知症へのリスクが算出できることとなります。ただし、現在はまだデータの紐づけができていないため、やるとすれば会員個人に健康診断等のデータを持参していただき、会員管理の個人データとして入力することで、トレーニング状況との対応が可能です。

写真①は、オムロンの活動量計です。この活動量計は市場価格は5000円程度ですが、スマートホンのアプリで測定データを転送し歩数や総消費カロリー、運動カロリー、階段上り歩数、早歩き歩数、脂肪燃焼量などの測定データが管理できます。会員にこの活動量計をもって頂くだけでも、各会員の歩数、活動量、消費エネルギーを管理し、各個人の医学的データや身体の情報(体重、体脂肪、サイズ、血圧)を対応させて、統計処理し分析すると、フィットネスの実施状況に応じたフィットネスの効果の判定や有用性、生活習慣病のリスク、認知症のリスクも図ることができるようになるかもしれません。

また、新しいプログラムを導入してそれに参加した人が、どの程度認知症のリスクが軽減するかを勝ち残りでプログラムの競争をさせることも可能になります。
今は、スマートホンやFitbitなどの携帯端末での活動量が測定できるようになってきていますが、個別の身体データとの対応できるようにすることが、今後のポイントになると思います。
よってフィットネスクラブの業界団体等が前述の日本医療研究開発機構へのアプローチをすべきだと思います。
ヨーロッパの大手フィットネスクラブのレジャーグループヨーロッパ等では、積極的にクラブデータを利用した論文が複数出されております。
日本でも、大手のフィットネスクラブ等では、会員管理を行う中では、すでにかなりデータが蓄積されていると思われます。それらを利用して多くのエビデンスが発信されることで、たくさんの人がフィットネスクラブを利用し、ひとりでも多くの人たちの健康寿命が延伸されるのではと思っています。日本でのフィットネスクラブの参加率をあげるためのなお一層の努力が必要とされています。

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