新型コロナウィルスのオミクロン株がBA2さらに、新たな変異株に置き換わり、高止まりが続いています。既に、2年4か月が経っていますが、収束の兆しが見えず、この状態が続いていくと考えた方がいいと思います。フィットネスクラブでは、地域によっても差がありますが、まだまだ、集客が思うように進まず、特に地方では、いまだに、「フィットネスクラブはクラスターが起こるので危ないところだ」、「たくさんの人が集まるので、怖い!」というようなイメージが払拭されず、苦戦しています。
現在あるエビデンス及び、プログラムから、なんとかFCに足を向けさせる方法を模索していかないといけません。コロナと身体活動やCRF〔cardiorespiratory fitness(心肺フィットネス)=VO2max〕との関連の論文が数多く出されています。前回も少し、示しましたが、COVID19に対して 運動プログラムと最大酸素摂取量(VO 2 max)は、患者のリスク層別化(リスク層別トリアージツール)に役割を果たす可能性が有ることが示されています。(Ahmed I et.al.2020)〔トリアージ(英語: triage)とは、一般的には、重要で最初に扱うべき者を選別(および決定)することを言う 。特に、患者の重症度に基づいて、医療・治療の優先度を決定して選別を行うこと〕運動プログラムに参加しておらず、最大酸素摂取量(VO2max)が低い者は、運動不足によるCOVID-19の感染リスクが最も高い集団です。(Ahmed I et.al.2020)したがって、感染症を予防するには、このような集団に最優先で運動を勧める必要があると思っています。
一般の人は、自分が体力レベルが高いのか、低いのか具体的な状況を測ることができません。よって、どういう人が体力レベルが低いのか(高齢者、女性、普段運動していない人など)を具体的に、クラブで広く測定します。〔チラシでのキャンペーンやイベントとして、又は、会員でなくても有料での測定〕フィットネスクラブでVO2max測定することで、来館の促進に、つながると思っています。
最新の論文では、「COVID-19患者の免疫バイオマーカーと症状の重症度および進行に対する有酸素運動の効果:ランダム化比較試験」【The effect of aerobic exercise on immune biomarkers and symptoms severity and progression in patients with COVID-19: A randomized control trial】が、発表されました。〔AA Mohamed, M Alawna – Journal of Bodywork and Movement Therapies, 2021 〕その内容は、
目的
COVID-19患者の免疫バイオマーカー、疾患の重症度、および進行に対する有酸素運動の影響を調査すること。
研究デザイン
ランダム化比較試験。
参加者
COVID-19の30人の患者がこの研究に参加しました。参加者の年齢は24歳から45歳で、軽度または中等度のCOVID-19を罹患していました。参加者は、運動群と対照群の2つのグループにランダムに割り当てられました。血液免疫マーカーと呼吸器症状の重症度を含むデータを測定しました。
介入
運動グループは、中程度の強度の有酸素運動を40分/セッション、3セッション/週、2週間実施しました。測定はベースライン時と2週間後に実施されました。
運動グループの参加者は、2週間の有酸素運動プログラムを実施しました。運動プログラムは、トレッドミルでのウォーキング/ランニングまたはエアロバイクでのサイクリングで構成されていました。各セッションは、5分間のウォームアップスローウォーキングまたはサイクリング、次に、主な介入は、30分間の中程度の強度の有酸素運動(ウォーキング/ランニングまたはサイクリング)で、最後に、5分間のクールダウン運動(ウォーキング/ランニングまたはサイクリング)を行いました。運動強度は、予測されたMHRの60〜75%でした(MHR = 210歳として計算)。主観的運動強度〔ボルグ指数:(RPE)〕は、運動強度を制御するために使用されました(知覚された運動のボルグ評価(RPE)スケール、2017年)。RPEは信頼性が高く検証済みの尺度であり、個人が運動中の運動レベルを評価することで運動強度を監視およびガイドできるようにします(Crawford et al。、2018)。患者のスケールを詳細に説明した後、ボルグスケールで運動評価レベルを12〜14(軽い–やや難しい)に保つように依頼しました。これは、患者が中程度の運動レベルで運動していることを示しています(ボルグ評価知覚運動(RPE)スケール、2017 )。患者が次の兆候と症状のいずれかを経験した場合、運動は中止されました:胸痛、息切れ、失神、跛行、倦怠感、運動失調、めまい、チアノーゼ、または蒼白( Albouaini et al。、2007)。
結果
ベースライン測定では、ウィスコンシンスケール(患者の疾患症状ポイント:低いほど良)の合計スコア、白血球、リンパ球、インターロイキン-6、インターロイキン-10、免疫グロブリン-A、およびTNF-αの両方のグループ間に有意差はありませんでした(P> .05)。介入後、ウィスコンシンスケールの合計スコアは、介入群で有意に減少しました(P <.05)。一方、白血球、リンパ球、および免疫グロブリンAは、介入群で有意に増加しました(P <.05)。
結論
本研究では、2週間の中程度の有酸素運動により、COVID-19関連障害の重症度率およびウィスコンシンスケール(患者の疾患症状ポイント:低いほど良)が低下しました。また、2週間の有酸素運動は、白血球、リンパ球、免疫グロブリンAの量を増やすことにより、免疫機能にプラスの影響を与えました。
研究手法の中では、ランダム化比較試験は、最も強力な研究デザインとされています。おそらく、新型コロナウイルスに感染した患者を対象にした研究としては、初めてだと思いますが、ここまではっきりとした有酸素運動の効果を示したデータとしては、画期的なものだと思います。これからは、さらに多くの治験が出てくると思いますが、今こそ、このような知見に基づいて、積極的な活動が、求められています。
おりしも、3月7日に、マシンメーカーのセノーから、新しく、VO2maxを測定できるエルゴメーターが発売されました。私の方では、これを機に、CRFを高めることが感染リスクを下げて、内容をアピールすることで、来館を促したいと思っています。CRFを高めることが大切でVO2maxを測定することで、その数値から、基準より低ければ、感染するリスクが高くなる可能性があるので、一度測定しませんか? 低くても、トレーニングで高められます。というような流れで、プログラム化していかないといけないと思われます。
VO2maxについて
「VO2max」とは、「 最大酸素摂取量 」といわれ、 運動時、1分間に身体が摂取できる酸素の最大量 のことを表します。 V = 量 (Volume) 、 O2 = 酸素 、 max = 最大 を意味し、体力の構成要素のうち全身持久力の指標。有酸素性能力とも呼ばれ、有酸素運動を行うと、心肺フィットネス(CRF:cardiorespiratory fitness )と呼ばれる心臓と肺の機能が刺激され、免疫力が向上し、ウイルスからの感染リスクを下げられる。スウェーデンの生理学者であるAstrand(1952)によって広く世界に普及した。測定法には、直接法と間接法があります。
直接法は、自転車エルゴメーターやトレッドミルなどを用いて最大努力での運動中に採気された呼気ガスを分析し、1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量を算出します。一方、間接法では、心拍数や運動負荷などから最大酸素摂取量を推定します。男性30歳の平均値は、体重あたりで40ml/kg/min程度ですが、エリート長距離選手の最大酸素摂取量は90ml/kg/minにも達します。心血管系疾患の罹患率や死亡率とも関連するなど、全身持久力としての体力の評価値としてはもちろんのこと、健康を表す指標としても重要であると考えられています。
VO2max測定することは、新型コロナウイルスの感染リスクの把握や予防のための有用であるとしており、これをフィットネスクラブで測定することは、とても意義のあることです。もともと、VO2maxは、厚生労働省が策定した運動の指針2006には、必要な運動のための指標として、性別年代別の基準値として示されており、また運動の指針2013にも、わかりやすくするために、VO2maxとメッツとの併記された形で、簡素化して記載されています。
VO2maxの基準値〔運動の指針2006、2013〕
40~59歳の男性は、35ml/kg/分、女性は30 ml/kg/分、60歳以上の男性32ml/kg/分、女性は26 ml/kg/分が、基準値であり、それよりも低いと感染リスクや死亡リスクが低くなっている可能性があります。コロナによる感染リスクや死亡リスクは、基礎疾患といわれるいろいろな疾患ごとにCRFの基準値とされる値があると思われるが、その関連についてはまだ明らかになっていないところがあると思われます。
〔一部疾病との関連では、18.7ml/kg・分以下だと、体力的に不足しているため、抵抗力が低く、基礎疾患があるという尺度になるかもしれません。(M A West et.al. Br J Surg. 2016 May)〕
医療機関で、抗体濃度を測ることで、感染リスクを把握することはできると思われますが、現状の医療提供体制を考えると一般の人がその検査をすることは現実的ではありません。よって現状ではフィットネスクラブでVO2max測定することは、一般の方の感染リスクを把握し、予防のためのプログラムを提供することができるため、社会に求められていることではないでしょうか。
最新のVO2max測定バイク
VO2maxの測定というと、一般的には全力でキツイ運動をしながら測定するというイメージがつきやすいですが、プロフィットジャパンでは、中高年者でも無理なくできる、最新のVO2maxの測定バイクのご提案や、クラブ運営に取り入れるコンサルティングをさせて頂いております。
お問合せ・ご質問は下記までご連絡ください。
平日 10:00~17:00
TEL:03-6240-8987