研究・業界情報

緊急事態宣言が解除されて、休業要請も解消され、ようやくフィットネスクラブの運営がスタートしました。

その間、フィットネス産業協会(以下、FIA)は、何度も経済産業省などの行政窓口にアクセスして、早くから、フィットネスクラブの必要性を唱え、フィットネスができなければ著しく身体の機能を落とし、中には命を落としかねない生活者や労働者もいることを訴えてきました。FIAではフィットネスクラブにおける新型コロナウイルスの感染予防対策を踏まえたガイドラインを策定し、Ver.1~9まで、協会スタッフの努力によって作成・改訂され、5月25日に国の審査をクリアしました。各クラブへの安全性の徹底のための周知活動を活発も行なっています。本当に業界に身を置く者として、頭が下がる思いです。〔最新ガイドラインについてはFIAのHP参照

さて、今後フィットネスシーンが新型コロナの前と後でどう変わっていくかということについて、業界内でもいろいろ話題になっています。

コロナ前の今までのフィットネスシーンではスタジオに60~100人が、1人/坪を超えてところ狭しとスタジオ内を動き回り、通常のエアコン能力では追いつかず、スタジオ内のガラスや鏡が曇り、スタジオに入るとムッとした熱い熱気が感じられるいわゆる三密の空間となる場合もあったかもしれません。

フィットネスジム内もトレッドミルが10~40台、マシーンが10~40台と、多台数配置され、利用のピーク時にはトレッドミルの利用を待つ人がいて、マシンも1人が利用する時間を制限して、たくさんの人が利用できるように配置されており、やはり100坪程度のジムであればマックス100人程度は会員が入っていました。

ロッカールームもロッカーが上下に分かれてある場合が多く、利用者が多いピーク時間は着替えをする人が多くいて、となりの人とぶつからないように気を遣いながら利用していました。サウナやお風呂は満員で、カランが空くまで待つ光景がみられました。プールではピーク時に1コースに10~15人が入り込み、往復のスイムは人とぶつからないように、気を遣いながら泳ぐこともありました。

さて、コロナ後に上記のガイドラインに合わせて運営を行なおうとすると、スタジオではソーシャルディスタンス(人との間隔2m)を保つ為には、前後左右に2mずつ確保すると、1人当りは2m×2m=4㎡(1.21坪)となります。スタジオの形状にもよりますが、今までだと16m×12m=192㎡(58坪)のスタジオだと、55~60人程度を定員としているところが多いですが、今は30~40人程度が定員になっているではないでしょうか。

またジムでは、今まではトレッドミルの間隔はほとんど隙間なく置かれていたので、2m空けるとなると、トレッドミルの間を1mは空けて配置しなおすことになります。マシンの間隔はクラブによって異りますが、各マシンの間が2mのところはほとんどないのが現状です。

またロッカーがFCでは一番密になりやすい所なので、通常のロッカーのうち1列ごとに使用不可として間隔を空けることが必要になるかもしれません。ロッカー内のキャパシティーは、ロッカー数の半分程度が目安になるのではと思います。(おそらくロッカーがキャパシティのネックとなる可能性大)

このように考えていくと、今までのようにFCでできるだけたくさんの人に利用してもらい利用率を上げるという積極的な利用促進によっての会員定着は難しくなっていきます。よって今後のFCの位置づけや、利用方法を見直さないといけません。

今後は、週に1~2度の来館、その目的は運動実施がメインではなく、運動方法の習得、効果の測定、新しい目標の設定。

今までのような、貸館的要素の運営方法だけではなく、事業館としての機能を強く持たせる必要性が高まるのではないかと思います。たとえば、FCに来て、運動やトレーニングを行う、場所の提供という位置づけから、週に1度はFCに来館するけれども、その目的は運動することではなく、運動やトレーニングの方法を習う為に来て、また運動を行なっていることによる効果を測ったり、新しい目標を設定する為のコーチングを受けるということの為に来館するというスタイルも生まれてきます。

FCは、運動を行なう場ではなく、情報を得る場、FCをコア(核)としたネットワークの場になって行くのではないかと思います。そうすれば、習ったことを自宅や公園でも実践できますし、運動を行なったことの効果もきちんと把握できます。各クラブではユーチューブ等の動画のアップを積極的に行い、自宅での巣ごもり中のお客様にプログラムを提供していました。

今回広く推奨されたテレワークでもZOOMなどによってエクササイズを行う人が増えましたが、それらの中心にFCが位置づけられるように意識して行動をしていかないといけません。先月号のNEXTでは、オンラインフィットネスの様々な可能性として、オンラインパーソナルトレーニングやオンラインヨガ、オンデマンドフィットネス、オンラインマイクロジム等が紹介されておりまたホームフィットネスとしてのIoTフィットネスマシンを使ったアメリカのオンラインフィットネスの会社が複数紹介されています。今後は、フィットネス産業は多様化が進むのは間違いないと思われますが、フィットネスクラブでも、クラブをコアとした、情報ネットワークシステムの構築をすることが急務であると思います。

そのためには、会員の名前や入会目的を知っておくこと、来館頻度やプランニングで、お客様の行動を把握し、興味のあるものの情報を仕入れ、お知らせし、その商品やサービスを提供する。また、新たなセルフイメージを広げることができ、購入していただくことで、クラブに来れない時のホームフィットネスにも利用しています。継続してこれらの情報や有料サービスを受けるお客様は、スタッフとのコミュニケーションが自然と密になり会員定着の手助けになることは言うまでもありません。

図1)クラブをコアとした提供サービスとビジネスコンテンツ(施設内外)

図1)クラブをコアとした提供サービスとビジネスコンテンツ(施設内外)


フィットネスクラブをコアとした提供サービスについて例をあげて説明します。

例1
フィットネスクラブで以下のようなアプリケーションを提供するとします。

(以下、掲載の了承をいただき(株)ボディクエスト社のオンラインアプリケーションで、説明します)
マイページを作成して、その会員の目標、週間スケジュール、提供プログラム、プログラムの実施状況を確認でき
るようにします。担当トレーナーに事前予約をして、クラブに1~2回/週(月)来館し、いつまでにどうなりたいかを伝えその折に個人の目標を設定し、現在の体の状況(体重、体脂肪、サイズ、不定愁訴等)を確認します。自宅や公園でやるエクササイズを教えてもらい、それを週間スケジュールに落とし込み実施し、その履歴をアプリに入力します。次に、クラブに来てコーチングを受けるまでに、どのくらい効果が出ているかを確認し、次のステップ(プログラム)に進みます。このようにすると、週に1~2回のクラブ来館でホームフィットネスの実施状況も確認でき、継続的な利用促進となります。
現在、当社でも下記のような、アプリケーションの提供を準備中です。

 

(株)ボディクエスト社のオンラインアプリケーション

(株)ボディクエスト社のオンラインアプリケーション


例2

例えば、フィットネスクラブで、活動量計(写真①)を会員に配布します。(無料での配布が好ましいが、厳しければ入会時会員から登録料をいただいてその費用を充てる:市場価格は5000円程度)

普段からポケット等にいれて持ち歩くことで自動的にデータが記録され、それをスマートホンのアプリで測定データを転送し歩数や総消費カロリー、運動カロリー、階段上り歩数、早歩き歩数、脂肪燃焼量などの測定データが管理できます。普段は三密を避けて、近くの公園や自宅の近くのジョギングやウオーキングをして身体活動を行いながら、1週間に1~2度クラブに来ていただきスマートホンのデータをみながらカウンセリングし新たな目標や運動内容をトレーナーが伝えることで、ジム内の混雑が通常の半分程度で抑えられる可能性があります。

(写真①)

活動量計

 

 

活動量計グラフ

 

 

 

 

2月~3月は、1日9,600歩平均だったので、トレーナーは、4月は一日+2,000歩をアドバイス。結果的に約3,000歩増えたので、体重も▲2キロとなりました。



差別化された、有料ホームエクササイズ

自宅や公園でも行えるエクササイズを複数準備します。

 

  • TSプログラム

TS(トランクソリューション)は、装着してウオーキングやエクササイズを行うことで、体調を整え腰痛や肩こりを解消し、腹横筋を鍛えるエクササイズアイテムです。

クラブで、トランクソリューション(TS)プログラムの概要説明と装着方法、時間とエクササイズ内容を説明し、自宅で週2~3回実施していただく。

週に1度、来館及びオンライン(ZOOM等)で、コーチングを行い、効果の判定やエクササイズ状況を共有し、新たなエクササイズへと更新する。

TS(トランクソリューション)

 

TS(トランクソリューション)


 

  • ポータブルVRC

有料プログラムとしての加圧VRCプログラムを自宅や公園で気軽に実施していただくために、ポータブル化して、いつでもどこでも場所や時間を選ばずに手軽に加圧VRCトレーニングを実施できます。
クラブで、VRCプログラムを何度か体験していただき、VRCポータブル機の概要説明と装着方法、プログラムの時間とエクササイズ内容を説明しクラブでトライアル後、自宅で週2~3回実施していただく。週に一度、来館及びオンライン(ZOOM等)で、コーチングを行います。

ポータブルVRC



オンラインコーチング

活動量計やアプリケーションを利用して運動履歴や効果を確認し、その実績をもとに、週に1回程度、来館いただき、PPCに基づいてのコーチングを行う。

・カウンセリング
・運動履歴評価
・効果測定、プランニング



会員無料コンテンツ配信

コーチングや会員自身の目標に近づくため、クラブに来なくてもエクササイズができるように会員用のコンテンツを定期的に更新し、インストラクターが、目的別のエクササイズやケアメソッドを撮影し、月に10コンテンツ程度の動画を定期的に配信する。会員が来館した際、その会員にあった動画を提案し、そのプログラムの実施記録を記載していただき、次回のカウンセリング時に、提示する。

TOP