研究・業界情報

『世界のフィットネスクラブの参加率と日本での参加者の現状!』
(株)プロフィットジャパン 菊賀信雅


本紙の84号に「世界のフィットネスクラブの国別会員数」(IHRSA2014)のデータを掲載させて頂きました。

その後、同様のデータがIHRSA2018のグローバルレポートに掲載されました。

それによると、2014年と2018年では「世界のフィットネスクラブ参加率」はかなり大きく変化していることがわかります。(表1)

〔国際ヘルス・ラケット・スポーツクラブ協会調べ(IHRSA)〕

 

これを見ると2014年から2018年までの4年間で、米国(+2.9%、676万人増)、ドイツ(+1.9%、153万人増)、英国(+1.4%、142万人増)、フランス(+1.5%、130万人増)、イタリア(+1.6%、99万人増)と先進国では軒並み1%以上の伸び率になっており、各国で100万人以上が新たにフィットネスクラブの会員になっております。

一方、カナダとスペインは参加率が低下しております。特にスペインは100万人以上減少しており、何らかの影響(景気の影響等)があるように思われます。

日本はというと、416万人が424万人と8万人ほど増加しておりますが、増加率は0.03%とほぼ横ばいとなっています。日本でのフィットネスクラブの参加率はかなり以前から3%と言われておりそれは変わらない状況です。

なぜ、世界のフィットネスクラブと日本のフィットネスクラブとでは、参加率が大きく異なるのでしょうか?

それは、いろいろな要因が関わっていると考えられます。

一つには保険制度の違いがあると思います。日本では国民皆保険のため、身体に不調があれば、すぐに病院に行きます。医者では色々な検査をして、ドクターによる診察を受け、薬や処置を受けることができます。個人の負担は通常3割であり、年齢等によっては1割の負担で済みます。しかし多くの外国では公的保険がないため、医療機関を受診しようとすると、100%の負担となり、とても高額な費用を支払わないといけません。保険に入ろうとすると、民間の保険のため、米国などでは、4人家族で月額10万円程度かかってしまいます。

 

これでは、誰でもが保険に入れないため、自分の健康は自分で守るという意識が生まれます。前述のように日本の場合はちょっとした不調でも、すぐに医療機関にかかる傾向がありますが、外国では簡単には受診できないため、自然に自らの健康増進のために有効なフィットネスに積極的に取り組むようになります。

また、もう一つの理由としては、国ごとに国土の広さが違うので、建築コストの差が大きいことがあげられます。

海外では比較的に土地が広い場合が多いので、平屋の建物が多いため、建築コストが安く、またトレーニングマシン等を安価で購入している場合が多いです。日本の場合、ハードにかかる費用が多いので、フィットネスクラブの会費はどうしても高くならざるを得ません(5000円~10000円)。海外では本誌で記されている通り、クラブによっては月会費が10ドルからと、とても安価で会員になることができます。よってたくさんの方々が会員になるため、参加率が高いことが考えられます。

世界的にみると、フィットネスクラブの会員は増加しており、このことは2019年の「IHRSA」の総会でも報告されています。

その総会に参加された本紙編集長の古屋氏によると、世界で最も「フィットネスクラブ参加率」が高いのは、スウェーデンで21%、以下ノルウェー21%、米国21%、デンマーク18%、オランダ17%、フィンランド17%、カナダ16%、オーストラリア15%、英国14%、ニュージーランド14%。

また「フィットネスクラブ参加増加率」が最も高いのは、フィリピン(+33%)、次いで中国+30%、フィンランド+25%、韓国+21%、デンマーク+17%、インドネシア+12%、グアテマラ+11%、香港+11%、コスタリカ+11%との報告があったと教えていただきました。

また経済産業省が「スポーツ施設提供業の推移」として日本国内のフィットネス産業をまとめたデータとしては、84号では平成17年(2005年)を基準の指数(グラフ1)で表していました。

このデータはアップデートされ平成22年(2010年)を基準として表されています(グラフ2)

これを見るとフィットネスクラブ業は平成17年(2005年)~平成22年(2010年)まで約20ポイント上がっており平成22年(2010年)~平成28年(2016年)まで更に15ポイント程度上がっており継続して伸びていることがわかります。

 

(グラフ1)

 

(グラフ2)

 

「フィットネスクラブ」「スポーツ施設提供業(フィットネスクラブを除く)」「生活関連サービス業、娯楽業」「医療福祉」の推移及び関係では、「スポーツ施設提供業(フィットネスクラブを除く)」「生活関連サービス業、娯楽業」が低下傾向であるのに対し、フィットネスは前述のとおり増加傾向、「医療福祉」は緩やかな増加傾向であることをご紹介させていただきました(グラフ3)が、「フィットネスクラブ」と「医療福祉」の相関は、グラフ4の通りとても高く今までの生活関連サービス等ではなく「医療福祉」との延長上の業態に変化しているとの報告も以前よりありました。

フィットネスクラブ業が伸びている、また「医療福祉」に近い業態との事で、新らためてシニア層に向け、健康寿命を延伸させれるための「専門性」「疾病予防サービス」「パーソナル」「リハビリ」「メディカル」「リラクゼーション」というキーワードが引き続き必要不可欠であると思われます。

 

グラフ3

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