『ダイエットビジネス、フィットネス産業、今後伸びる業態の方向性や特徴は?』
(株)プロフィットジャパン 菊賀信雅
先日、本屋さんで「究極のダイエット、知られざる2兆円市場」というタイトルの週刊ダイヤモンドをみて、購入しました。記事には、ダイエット市場は現在、2兆円規模であり、フィットネス市場4,200億円、健康管理市場1,700億円、ダイエットサプリメント市場6,200億円、医療市場(保険適応外)〔健康診断、人間ドック、美容外科、痩身エステ等〕1兆円、となっており、今後もより細分化し膨張し続けていくだろうと予測しています。記事は、プライベートジムとしてこのところ注目されている「ライザップ」を中心に取り上げており、老舗フィットネスジムとして、コナミ、セントラル、ルネサンス、ティップネス、新興系ジムとしてカーブス、ジョイフィット、エニタイムフィットネス、プライベートジムとして「ライザップ」を取り上げています。ビジネスモデルとしてのライザップのユニークさに焦点を当てて、売上にかかる経費の按分が、通常のフィットネスクラブとは大きく異なり、人件費は、15%(通常フィットネスは20~30%)、家賃が4%(通常フィットネスは20%)、水道光熱費や施設維持費、減価償却費がほぼかからず、その分を広告宣伝費に数十億円規模で投入しているとしています。確かに、ライザップの運営会社の健康コーポレーションのIR情報によると、
2015年売り上げが、約391億円で、そのうち広告宣伝費が70億円となっており、これは、総売り上げの18%に当たります。売り上げ及び広告がすべてライザップとは限らないと思いますが、確かに広告宣伝費の割合が、通常のフィットネスではせいぜい5%程度ですので、際立って高いのがわかります。また、ダイエットビジネスとしては、ウェアブル端末やアプリが登場し、座位行動や活動量、体脂肪などを簡単に測れるようになったため、ITや健康管理システムの分野で、新たな市場が広がると予測しています。
以前、(社)フィットネス産業協会で「注目業態、今後伸びる業態の方向性や特徴」を調査されたことがあります。
【(社)フィットネス産業協会発表のフィットネス産業基礎データ2008〔2009年11月発刊〕】
それによると、今後伸びる業態の方向性や特徴は、「専門性」「疾病予防サービス」「パーソナル」「リハビリ」「メディカル」「リラクゼーション」というキーワードが示されており、特にエリアの項目には「低価格で利用でき、地域とのコミュニケーションの場としての位置づけとなる小規模施設」が理想ともありました。
その調査から、5年が経ち、「専門性」「パーソナル」のキーワードとしての前述のダイエット専門のプライベートジム『ライザップ』や女性専用のパーソナル指導の『カーブス』や「リハビリ」「メディカル」「パーソナル」の要素をもつ加圧トレーニングも店舗をのばしています。また、スタジオプログラムとしてのホットヨガや『コラーゲンスタジオ』も伸びてきています。「リラクゼーション」の要素としては、最近は「天然温泉」をうたったスーパー銭湯併設のフィットネス施設が新たに各地でオープンしており、既存のフィットネスクラブのスパ機能の充実を含め、中高年者の休養のニーズに答える施設が増えています。
「天然温泉」をうたったスーパー銭湯併設のフィットネス施設
「疾病予防サービス」「リハビリ」「メディカル」の分野では、日本では超高齢社会を迎えて、政府は、10年後の新しい未来を見据えて、少子高齢化先進国としての持続性の確保などを目的とした、センターイノベーション(COI)プログラムに取り組んでいます。もちろん、フィットネス産業も、「健康寿命延伸産業」として位置づけられており、積極的に取り組んでいかなければなりません。このところの高齢者、低体力者の身体の機能の低下について、ロコモティブシンドローム(整形外科学会)やサルコペニア(日本体力医学会他)などの状況が指摘されています。また、昨年の5月、日本老年医学会では、高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)を「フレイル(Frailty)」と呼ぶことを提唱し、高齢者の介護予防、健康・医療に携わる専門職に「フレイル」の理解と予防に取り組むことを呼びかけています。今年4月の介護保険の一部変更に伴い、地域支援事業としての一次予防(一般高齢者)、二次予防(特定高齢者:要介護状態になる恐れのある高齢者)は、地域で自立した日常生活を送れることを目的として、すべて市町村で、行うこととなり、民間のフィットネス施設でもその業務の一部を担うことが可能となり、積極的に取り組んでいかなければならないと思います。