研究・業界情報

既報の通り世界的にフィットネスクラブ数が増加し、会員数が増えて、人口全体に対するフィットネスクラブへの参加率が、増加しています。

また日本でも、年度別フィットネスクラブの売上が、右上がりに推移しており、2018年で4,800億円となっています。(図1)

クラブ数は、本誌、フィットネスビジネス編集部調べによる報告では、日本のフィットネスクラブ新規開業の推移は、図2の通り、やはり右肩上がりで増加していますが、2019年は少し落ち着いた感じとなっています。

また、フィットネスクラブとしての業態別新規数は、図3の通りで、2017年からジム型が一番多く、2018年は、オープンクラブ536か所のうち、56.2%に当たる301か所がジム型、2019年は379か所のオープンに対して、222か所がジム型(58.6%)でした。

ジム型が増えた理由は、異業種からの参入を含めいろいろあり、お金をかければ場所を借りて、マシンを購入すれば、開業することは可能です。しかし民間である以上持続することが不可欠であり、ポイントは今後そのクラブが継続して、運営していけるかどうかにかかっています。

現在のジム型のクラブは、大きく分けて2つに分類されます。

ひとつは、入会したら施設をいつでも自由に利用していただく貸館型、このクラブは24時間フィットネスに代表されるように年中無休を謳い文句に、立地と手軽さ、低価格を売りにして急速に施設数が増えています。

もうひとつは、お客様の情報を個別に聴き出し、要望に合わせたプログラムなどを提供したり、いろいろなイベントやパーソナルトレーニングを謳い文句に、カウンセリングを行い、様々な内容を提供している事業館型です。こちらは、効果や結果にコミットするプログラムやシステムを提供しパーソナルにトレーニングを指導するため、比較的高単価な事業体と、なっています。

貸館型、事業館型の両方を備え持ったクラブも最近ができているようです。 いずれにしても、事業である以上継続が前提であり、そのための仕組みが不可欠です。

国内でのフィットネスクラブの継続についてのエビデンスは、圧倒的に不足していますが、一般人や職域、介護予防、海外での運動の継続に関連した論文は発表されています。

 運動の継続には運動機能のみならず,心理的な要因も深い関わりがあります。Dubbert らは地域在住高齢者を対象に心理的なカウンセリングを行う介入により,有意に運動量が増え,身体機能が改善したことを報告しています 1)。細井らは地域在住高齢者における継続性のある運動の条件として,運動開始前と運動開始後に分けて運動指導を行うことが重要としており,運動継続後には対象者が「楽しい」「気持ちがいい」と思えること,「効果を実感できること」,「習慣化しやすいこと」を挙げています 2)。また,Forkan らは疲れを感じるものや道具が必要なもの,運動していて気持ちがよくないものは自主的な運動に向かないことを報告しています3)。Harada らは 50 歳以上の成人の約半数が筋力トレーニングに対してやろうと思わない運動と答え,筋力トレーニングはきつい運動であるととらえています 4)。加えて,中野らは高齢者の運動の 継続には「休んでも再開する自信(Recovery Selfefficacy)」が関連していることを報告しています 5)。 これらのことから,運動の継続には 心理的要因を考慮した介入が必要であると考えられます。

「休んでも再開する自信(Recovery Selfefficacy)」は、例えば12月、1月は、忘年会や新年会、家族の集まり、友達との交流など運動する時間が阻害される要因が多くあります。それが、1月中旬以降、落ち着いてきたので、また運動を始めることができるかという自信です。このことは、フィットネスクラブでも、同様のことが言えます。12月、1月と利用回数や行くタイミングが減ってしまい、クラブへの足が遠のいてしまいます。そうすると、クラブに行くのがおっくうになり、気が付いたら、2月中旬から3月になっていて、2か月~3か月分の会費だけが引き落ちています。そうなるともったいないからやめるという意識が働いてしまいます。

そんな時、このReSEが、ある(あらかじめ高めておく)と、また復活して、利用していただけるようになります。そうするには、入会後あらかじめ会員の方にこういう事態があり得ることを伝え、時間が空いても、戻ってくること(カムバック)の重要性を話しておかないといけません。そのための仕組みをあらかじめ作っておくことが大切です。

また、クラブで提供するサービスが下記のポイントに合致しているかをチェックすることも大切です。

「楽しい」「気持ちがいい」と思えること,「効果を実感できること」,「習慣化しやすいこと」エビデンスに基づいたプログラムを提供していただくことをお進めします。

引用文献

1)Dubbert PM, Morey MC, Kirchner KA, et al. Counseling for home-based walking and strength exercise in older primary care patients. Arch Intern Med. 2008; 168(9):979–86.

2)細井俊希 , 荒井智之 , 藤田博曉 . 行動科学の理論に基づいた運動プログラム「ロコトレ BBS」の効果-地域高齢女性における運動の継続に関する検討- . 理学療法科学 . 2011; 26(4):511–514

3)Forkan R, Pumper B, Smyth N, et al. Exercise adherence following physical therapy intervention in older adults with impaired balance. Phys Ther. 2006; 86(3):401–

4)Harada K, Oka K, Shibata A, et al. Factors Associated with the Stages of Change for Strength Training Behavior. Int J Sport Heal Sci. 2008; 6:251–263. 5)中野聡子 , 奥野純子 , 深作貴子 , 他 . 介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因 . 理学療法学 . 2015; 42(6):511–518.

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